漱石の苦悩と一郎の苦悩が重なっていて、漱石の不安や苦悩がリアルに描かれていると思った。三角関係のような話だけれど、ある娘さんの話など考えさせられるシーンも多くあった。 自分に近い主人公の短所を逃げずに描いた漱石は文学者として優れている。
病院生活の描写は 漱石自身の療養生活の裏打ちがあるせいか いきいきとしている。 物見遊山の場面は 薄く 陳腐である。 弟に そんなことを頼むなんて 精神が 壊れているのかなとも感じた。
とても面白かった 会話の駆け引きが絶妙、というか戦っているみたいだ 出てくる人が皆リアル 漱石に一番近いのは兄だろうな 最後の、兄がこのままずっと眠っていられたら幸福なんだろうなあという言葉は残酷だと思う。死んだ方がましともとれるじゃないか 他の人と分かりあえるのは幻想だと思い知っては忘れてまた傷ついて、今が嫌で次の行動に移って移ってそれでも現状を肯定できないとか、幸せになる方法が何処かにあると感じ捕まえようと焦ったり、自分だけが生きるのが下手だと妙に確信してたり 何だか救いのない話のようにも思えます。あまり考えたくないようなことを真っ直ぐ書いちゃう夏目漱石に拍手 また月日を重ねてから読み直すと、違った感想を持ちそうです