思い出す事など
おもいだすことなど
初出:「朝日新聞」1910(明治43)年10月~1911(明治44)年4月分量:約171分
書き出し:一ようやくの事でまた病院まで帰って来た。思い出すとここで暑い朝夕《あさゆう》を送ったのももう三カ月の昔になる。その頃《ころ》は二階の廂《ひさし》から六尺に余るほどの長い葭簀《よしず》を日除《ひよけ》に差し出して、熱《ほて》りの強い縁側《えんがわ》を幾分《いくぶん》か暗くしてあった。その縁側に是公《ぜこう》から貰った楓《かえで》の盆栽《ぼんさい》と、時々人の見舞に持って来てくれる草花などを置いて、退...