「子規の画」の感想
子規の画
しきのえ

夏目漱石

分量:約5
書き出し:余は子規《しき》の描いた画《え》をたった一枚持っている。亡友の記念《かたみ》だと思って長い間それを袋の中に入れてしまっておいた。年数《ねんすう》の経《た》つに伴《つ》れて、ある時はまるで袋の所在を忘れて打ち過ぎる事も多かった。近頃ふと思い出して、ああしておいては転宅の際などにどこへ散逸するかも知れないから、今のうちに表具屋へやって懸物《かけもの》にでも仕立てさせようと云う気が起った。渋紙の袋を引き...
更新日: 2024/04/23
19双之川喜41さんの感想

 正岡子規が 夏目漱石に送った 東菊「アズマギク」の絵は 一輪挿しに挿した三色のもので 葉が九枚 描かれている。高浜虚子に この絵を見せたところ 「正岡の絵はうまいじゃありませんか」といったという。そも 子規は 「拙」の 欠乏した男で 数少ない「拙」である。と 漱石は とりなす。病死した子規に対する 漱石の 敬愛する心が よく表れていると想った。

更新日: 2023/08/12
阿波のケンさんさんの感想

床に伏している子規が5,6時間もかけて描いたと思われる東菊の絵。それだけで漱石に対する友情の大きさが感じられ目頭が熱くなる。

更新日: 2022/03/05
cdd6f53e9284さんの感想

ごく若い頃、漱石の作品を一通り読んで、それぞれの作品のタイプが、皆が皆、まるで違うのに驚いたことがある。 漱石の生涯を知り、人となりを知り、彼の生きた時代を知ったうえで、それらに誠実に抗した漱石の精神の有り様と、その起伏が分かれば、「坊っちゃん」を読み「明暗」を読んで、そのトーンのあまりの差異も理屈としては納得できるが、やはり、戸惑うのは当然だ。 しかし、ストーリーの違いや語り口の違いはあっても、漱石の文章は、それらの文章のどこをチョイスしても、やはり漱石独自のオリジナリティを有していることには驚かされる。 例えば、この小品「子規の画」が、そうだ。 漱石は、子規が描いた一輪挿しのあずまぎくの画を前にしている。 長い間、仕舞いっぱなしにしていたが、紛失してしまうことを危惧して、手元にある子規の手紙とともに表具屋に表装させたものだ。 漱石は思う、この絵は、見るからにまずい、俳句や歌なら一瞬のインスピレーションで雑作もなく作り上げられる子規が、なんだ、この生真面目な骨折りぶりは、と漱石は、その稚拙さを苦笑する。 しかし、こう思う。 遠い熊本にいる自分のために、子規は病身をおして、たどたどしく何時間もかけてのこの絵を描いたのだ。 さらに漱石はこうも思う、 「子規はこの簡単な草花を描くために非常な努力を惜しまなかったように見える。わずか三茎の花に、少なくとも五六時間の手間をかけて、どこからどこまで丹念に塗りあげている。これほどの骨折りは、ただ病中の根気仕事として余程の決心を要するのみならず、いかにも無雑作に俳句や歌を作り上げる彼の性情からいっても、明らかな矛盾である。」 しかし、漱石は、その矛盾のわけを、子規の友情とともに、十分に理解していて、その生真面目さを有り難いと内心では思っている。 そこに高濱虚子がやってくる。 「どうだ、まずい絵だろう」と、漱石は虚子に言う。 すると、虚子は答える 「正岡の絵は、うまいじゃありませんか」と。 虚子はこの絵を一目見て、子規の漱石へ向けた友情と、その思いを十分に理解しながら受け止め、深い感慨のなかにいる漱石の気持ちを一瞬のうちに理解して「うまい」と見抜いた。 このエピソードに続く最後の一文は、日本文学史に刻印されたまさに白眉といい得る文章として記憶されるものである。 「子規は人間として、また文学者として、最も「拙」の欠乏した男であった。永年彼と交際したどの月にも、どの日にも、余はいまだかつて彼の拙を笑い得るの機会を捉え得た試しがない。また彼の説に惚れ込んだ瞬間の場合さえ持たなかった。彼の没後殆ど十年になろうとする今日、彼のわざわざ余のために描いた一輪のあずまぎくのうち、確かこの一拙字を認めることのできたのは、その結果が余をして失笑せしむると、感服せしむるとに論なく、余にとっては多大の興味がある。ただ画が如何にも淋しい。出来うるならば、子規にこの拙なところをもう少し雄大に発揮させて、淋しさの償いとしたかった。」 親友の子規を失って、漱石は、本当に悲しくて淋しかったんだなあ。だって、この文章からは、含羞に満ちた恋に通ずるような、甘く切ない友愛の可憐さが張りつめていて、漱石の切実な慟哭が聞こえてくるみたいだもの。 う~ん、なんか身に詰まされる話で、あれこれと考えちゃうけど、生涯の友を持てたんだから、その点は漱石は幸せだったかもしれないけど、しかし、まあ、とりあえず、今日のところは、そういうことにしときますか。

更新日: 2020/03/27
51e72a7f1dc7さんの感想

参考になりました

更新日: 2017/03/14
bb106e622e7aさんの感想

現文特講の授業で取り扱った作品。 漱石が見た子規の弱点。 素敵な関係だったのだなぁと。

更新日: 2017/02/07
496ddca99f69さんの感想

漱石らしく淡々と、子規について若干おちょくるように懐古する話。 最後が漱石にしては感傷的で印象に残る。

更新日: 2016/07/18
fd6d85073f52さんの感想

親しい友人を亡くすというのはこのような感じなのだろうかと思った。

更新日: 2015/12/24
86a8a0971500さんの感想

親しい間だからこそ、互いに言い合える感じが出ていて良かった