明治20年の事を描いているが函館は東京の如しとその発展を形容している。小樽から東京の間で褒めているのは松島の景色だけというのが面白い。
開高健『華夏、人あれば食ありii』に触れる露伴の蘇東坡論はないかとページを探すにこれなく、露伴若き頃の決死の旅日記に行き着いた。足まめの痛み、ちぎれる草鞋、食あたり、路銀の乏しさに自嘲し世間のせち辛さをおのが傷口に敢えて塗り込めるように歯を食いしばり、東京への長途の旅を続けるそのひたむきさに感じ入った。思うに、おのが足もて歩かずんばなさざらぬと。天晴、青春の記なり。
現代風に言うなら無頼旅。漂泊の中で生まれる歌もある。