黒衣聖母
こくいせいぼ
初出:「文章倶楽部」1920(大正9)年5月分量:約13分
書き出し:——この涙の谷に呻《うめ》き泣きて、御身《おんみ》に願いをかけ奉る。……御身の憐みの御眼《おんめ》をわれらに廻《めぐ》らせ給え。……深く御柔軟《ごじゅうなん》、深く御哀憐、すぐれて甘《うまし》くまします「びるぜん、さんたまりや」様————和訳「けれんど」——「どうです、これは。」田代《たしろ》君はこう云いながら、一体の麻利耶観音《マリヤかんのん》を卓子《テーブル》の上へ載せて見せた。麻利耶観音と称...