「クサンチス」の感想
クサンチス
クサンチス
初出:「新小説 一六ノ七」1911(明治44)年7月1日

森鴎外

分量:約28
書き出し:飾棚だの飾箱だのといふものがある。貴重な材木や硝子《ガラス》を使つて細工がしてある。その小さい中へ色々な物が逃げ込んで、そこを隠れ家《が》にしてゐる。その中から枯れ萎びた物の香《か》が立ち昇る。過ぎ去つた時代の、人を動かす埃がその上に浮かんでゐる。昔の人のした奢侈の、上品な、うら哀《かな》しい心がそこから啓示《けいし》せられるのである。己《おれ》はさういふ棚や箱を見る度に、こんな事を思ふ。なんでも...
更新日: 2024/04/30
19双之川喜41さんの感想

 クサンチスは 飾り箱の中に住む ギリシャ生まれの 踊り子の人形である。いとも やすやすと 一線を 踏み外すので 他の人形から 大変 重宝されている。ある時 彼女の 信奉者である ファウヌスは クサンチスが 支邦人の人形の膝に 乗っているところを 見てしまい 嫉妬に狂って 木端微塵(こっぱみじんに)に 彼女を 壊してしまう。そのため かれは 箱から外に 売られてしまう。この騒ぎから 何かしらの 教訓を得ることが できるであろうか。私は この現実の世間も 箱の中の 閉鎖空間(へいさくうかん)と 似たようなものと 感じた。

更新日: 2016/02/24
3e9c4b240bacさんの感想

すみれの花冠をつけた、美しい踊り子の人形「クサンチス」が、他の男の人形たちを魅了し、自由な愛情の生活にふけり、しまいには破滅してしまう話。 美しい公爵、陰鬱な音楽家の青年、がっしりした体格のファウヌス、そしてだらしなく腹のでた下品な支那人形…。 クサンチスの愛は相手の外見を選ぶことをしらない。 好色であり堕落的である。 クサンチスの堕落の結果、怒り狂ったファウヌスがクサンチスを一撃のもとに粉々にしてしまう。そして、他の男の人形たちも愛する相手を失い、それぞれ破滅してしまのだった。 一読するとクサンチスの好色が悪い?ともとれるような道徳小説のようですが作者は、そうではないと。クサンチスの堕落が悪いのだと言ってますね。それにしてもまるで人形劇を眼前に見るように楽しく読めました。