職務に忠実だけの巡査、乳飲み子を抱えた女には無慈悲な巡査ともなり一方人助けの為に水に飛び込む勇敢な巡査ともなる。思いやりの心が欠けているのか。
自業自得とでも言いましょうか。 巡査と娘は意地悪な叔父により結ばれない悲恋ではあるが、もし結ばれてしまったら巡査だけがいい思いのする偽りのハッピーエンドになってしまう。くそ真面目な巡査のせいでつらい思いをした老父や母子を我々は知っているから、巡査の恋が結ばれるのは道理に合わないと思うのである。自業自得を書き切ったことを評価したい作品だった。
真面目一辺倒、とにかく己の仕事を貫く巡査がいる。事情を知れば目こぼししてしまいそうな老人や、乳飲み子を抱えた女さえ、ならぬならぬとばっさり切り捨てる。そんな彼には想う人がいて、彼女もまた彼を想っていたが、邪な伯父のために結婚できずにいた。そんな伯父が、酔っ払った折りに冷たい水の中にはまってしまった。泳げない彼の決断とは。 ルールは守るべきだし、それを取り締まるのが巡査なのだから目こぼししろとは思えない。しかし、なんの解決策も与えずにならぬならぬと怒鳴るのは愚か者のすることに思える。 これで、最後の選択肢を違えていれば私は彼を扱き下ろし、この作品を酷評しただろう。 彼はただただ真っ直ぐで固すぎる人間だったのだ。最後の最後それがわかったとき、すこしだけ胸がスッとした。
巡査なので 規則を守らせるのに命をかけており 年寄りの車夫の股引の破れを厳重に注意し 泣きわめく赤子に授乳のために胸をはだけたと 女を叱り飛ばす。 恋路を邪魔した爺が 溺れたのを 泳げもしないのに 愚直に 飛び込み 自らも溺死してしまう。 ややこしい感動が 沸き起こると感じた。
冷酷さの対比と聞いて読んだが、そもそも伯父がガチクズ過ぎて巡査いい人すぎでは?という思いが消えなかった。 文章は徹頭徹尾美しく、最初は文体に慣れず読み難いと思っていたが途中から慣れてくると却ってその難解な文体が作中の世界に陶酔させる手助けをしてくれているように感じた。 この本を読めて良かったと思った。
巡査を通して矛盾する人間関係に対する問いかけです。 ただ、中盤の念入りに書かれている伯父の非道が印象深く、その間の三人の駆け引きのような挙動は緊迫感がありました。
泉鏡花にしては読みやすいように思った…………よ、読みやすい(゜m゜;)