奥様探偵術
おくさまたんていじゅつ
初出:「婦人サロン」1930(昭和5)年10月分量:約14分
書き出し:あるところに一人のオクサマがありました。その奥様は次のような場合に、キット御主人に喰ってかかられました。胸倉を取って小突《こづ》きまわされました。「もう出て行く」と紋切型を云われました。引っくり返って足をバタバタされました……かも知れませんでした。……御主人のお帰りが晩《おそ》い時…………御主人の身体《からだ》か、持物か、お召物のどこかが酒臭い時…………会社に電話をかけて、出張が嘘だとわかった時…...