松江印象記
まつえいんしょうき
初出:「松陽新報」1915(大正4)年8月分量:約9分
書き出し:一松江へ来て、まず自分の心をひいたものは、この市《まち》を縦横《じゅうおう》に貫いている川の水とその川の上に架《か》けられた多くの木造の橋とであった。河流の多い都市はひとり松江のみではない。しかし、そういう都市の水は、自分の知っている限りでたいていはそこに架けられた橋梁《きょうりょう》によって少からず、その美しさを殺《そ》がれていた。なぜといえば、その都市の人々は必ずその川の流れに第三流の櫛形《く...