半七捕物帳
はんしちとりものちょう
13 弁天娘
13 べんてんむすめ分量:約49分
書き出し:一安政と年号のあらたまった年の三月十八日であった。半七はこれから午飯《ひるめし》を食って、浅草の三社《さんじゃ》祭りを見物に出かけようかと思っているところへ、三十五六の男がたずねて来た。かれは神田の明神下の山城屋という質屋の番頭で、利兵衛という白鼠《しろねずみ》であることを半七はかねて知っていた。「なんだかお天気がはっきりしないので困ります。折角の三社様もきのうの宵宮《よみや》はとうとう降られてし...