半七捕物帳
はんしちとりものちょう
63 川越次郎兵衛
63 かわごえのじろべえ分量:約58分
書き出し:一四月の日曜と祭日、二日つづきの休暇を利用して、わたしは友達と二人連れで川越の喜多院の桜を見物して来た。それから一週間ほどの後に半七老人を訪問すると、老人は昔なつかしそうに云った。「はあ、川越へお出ででしたか。わたくしも江戸時代に二度行ったことがあります。今はどんなに変りましたかね。御承知でもありましょうが、川越という土地は松平|大和守《やまとのかみ》十七万石の城下で、昔からなかなか繁昌の町でした...