半七捕物帳
はんしちとりものちょう
47 金の蝋燭
47 きんのろうそく分量:約55分
書き出し:一秋の夜の長い頃であった。わたしが例のごとく半七老人をたずねて、面白い昔話を聴かされていると、六畳の座敷の電灯がふっと消えた。「あ、停電か」老人は老婢《ばあや》を呼んで、すぐに蝋燭を持って来させた。「行灯《あんどう》やランプと違って、電灯は便利に相違ないが、時々に停電するのが難儀ですね」「それでもお宅には、いつでも蝋燭の用意があるのには感心しますね」と、わたしは云った。「なに、感心するほどのことで...