水の三日
みずのみっか
初出:「学友会雑誌」1910(明治43)年11月分量:約13分
書き出し:講堂で、罹災民《りさいみん》慰問会の開かれる日の午後。一年の丙組(当日はここを、僕ら——卒業生と在校生との事務所にした)の教室をはいると、もう上原君と岩佐君とが、部屋《へや》のまん中へ机をすえて、何かせっせと書いていた。うつむいた上原君の顔が、窓からさす日の光で赤く見える。入口に近い机の上では、七条君や下村君やその他僕が名を知らない卒業生諸君が、寄附の浴衣《ゆかた》やら手ぬぐいやら晒布《さらし》や...