半七捕物帳
はんしちとりものちょう
64 廻り灯籠
64 まわりどうろう分量:約55分
書き出し:一「いつも云うことですが、わたくし共の方には陽気なお話や面白いお話は少ない」と、半七老人は笑った。「なにかお正月らしい話をしろと云われても、サアそれはと行き詰まってしまいます。それでも時時におかしいような話はあります。もちろん寄席の落語を聴くように、頭から仕舞いまでげらげら笑っているようなものはありません。まあ、その話に可笑味《おかしみ》があるという程度のものですが、それでもおかしいと云えば確かに...