半七捕物帳
はんしちとりものちょう
17 三河万歳
17 みかわまんざい分量:約43分
書き出し:一ある年の正月、門松《かどまつ》のまだ取れないうちに赤坂の家《うち》をたずねると、半七老人は格子の前に突っ立って、初春の巷《ちまた》のゆきかいを眺めているらしかった。「やあ、いらっしゃい。まずおめでとうございます」いつもの座敷へ通されて、年頭の挨拶が式《かた》のごとくに済むと、おなじみの老婢《ばあや》が屠蘇の膳を運び出して来た。わたしがここの家で屠蘇を祝うのは、このときが二度目であったように記憶し...