青空文庫

「旗本退屈男」の感想

旗本退屈男

はたもとたいくつおとこ

06 第六話 身延に現れた退屈男

06 だいろくわ みのぶにあらわれたたいくつおとこ

奇人描写時代劇歴史的人物の描写幽玄軽妙

書き出し

一その第六話です。シャン、シャンと鈴が鳴る……。どこかでわびしい鈴が鳴る……。駅路の馬の鈴にちがいない。シャン、シャンとまた鳴った。わびしくどこかでまた鳴った。だが、姿はない。どこでなるか、ちらとの影もないのです。見えない程にも身延のお山につづく街道は、谷も霧、杜も霧、目路の限り夢色にぼうッとぼかされて只いち面の濃い朝霧でした。しっとり降りた深いその霧の中で、シャンシャンとまた鈴が鳴りました。遠く

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