旗本退屈男
はたもとたいくつおとこ
06 第六話 身延に現れた退屈男
06 だいろくわ みのぶにあらわれたたいくつおとこ
佐々木味津三約49分
奇人描写時代劇歴史的人物の描写幽玄軽妙
書き出し
一その第六話です。シャン、シャンと鈴が鳴る……。どこかでわびしい鈴が鳴る……。駅路の馬の鈴にちがいない。シャン、シャンとまた鳴った。わびしくどこかでまた鳴った。だが、姿はない。どこでなるか、ちらとの影もないのです。見えない程にも身延のお山につづく街道は、谷も霧、杜も霧、目路の限り夢色にぼうッとぼかされて只いち面の濃い朝霧でした。しっとり降りた深いその霧の中で、シャンシャンとまた鈴が鳴りました。遠く…
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