青空文庫

「かんかん虫」の感想

かんかん虫

かんかんむし

初出:「白樺」1910(明治43)年10月

有島武郎29

書き出し

ドゥニパー湾の水は、照り続く八月の熱で煮え立って、総ての濁った複色の彩は影を潜め、モネーの画に見る様な、強烈な単色ばかりが、海と空と船と人とを、めまぐるしい迄にあざやかに染めて、其の総てを真夏の光が、押し包む様に射して居る。丁度昼弁当時で太陽は最頂、物の影が煎りつく様に小さく濃く、それを見てすらぎらぎらと眼が痛む程の暑さであった。私は弁当を仕舞ってから、荷船オデッサ丸の舷にぴったりと繋ってある大運

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