かんじんしわ
初出:「河上肇著作集第9巻」筑摩書房、1964(昭和39)年12月15日
書き出し
佐藤春夫の車塵集を見ると、「杏花一孤村、流水数間屋、夕陽不見人、※牛麦中宿」といふ五絶を、杏咲くさびしき田舎川添ひや家をちこち入日さし人げもなくて麦畑にねむる牛ありと訳してあるが、「家をちこち」はどうかと思ふ。原詩にいふ数間の屋は、三間か四間かの小さな一軒の家を指したものに相違なからう。古くは陶淵明の「園田の居に帰る」と題する詩に、「拙を守つて園田に帰る、方宅十余畝、草屋八九間」云々とあるは、人の…