青空文庫

「足跡」の感想

足跡

あしあと

初出:「スバル 第二号」1909(明治42)年2月1日

石川啄木45

書き出し

冬の長い國のことで、物蔭にはまだ雪が殘つて居り、村端れの溝に芹の葉一片青んでゐないが、晴れた空はそことなく霞んで、雪消の路の泥濘の處々乾きかゝつた上を、春めいた風が薄ら温かく吹いてゐた。それは明治四十年四月一日のことであつた。新學年始業式の日なので、S村尋常高等小學校の代用教員、千早健は、平生より少し早目に出勤した。白墨の粉に汚れた木綿の紋附に、裾の擦り切れた長目の袴を穿いて、クリ/\した三分刈の

1 / 0