閑天地
かんてんち
初出:「岩手日報」1905(明治38)年6月9日~11日、13日~17日、20日~25日、27日~30日、7月6日、7日、18日
石川啄木約72分
書き出し
(一)(「閑天地」は実に閑天地なり。野※の※雲に舞ひ、黄牛の草に眠るが如し。又春光野に流れて鳥初めて歌ひ、暮風清蔭に湧いて蜩の声を作すが如し。未だ許さず、生きんが為めにのみ生き、行かんがためにのみ行くが如き人の、この悠々の世界に入るを。啄木、永く都塵に埋もれて、旦暮身世の怱忙に追はれ、意ならずして故郷の風色にそむくうちに、身は塵臭に染み、吟心また労をおぼえぬ。乃ち茲に暫らく閑天地を求めて、心頭に雲…
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