まどにて
初出:「労働文学」1919(大正8)年4月号
書き出し
うらの窓から見るとすぐ窓下の庭にあるひねくれ曲った一本の木すっかり葉っぱの落ちつくしたそれは大きないちじくの木だそこに槇の生垣があるその外は一めんの野菜畠で菜っぱや大根が葱もいっしょに青々としているその上をわたってくる松風や浪の音朝々のきっぱりした汽船の汽笛みよ雪のようなけさの大霜を河向うの篠やぶでは鵙がひきさかれるような声をして鳴いているふたたび裏庭のいちじくの木をみるといままで自分はきづかなか…