おかよ
初出:「講談雑誌」博文館、1942(昭和17)年5月号
書き出し
一——ああこんどこそ。おかよは縁台から立った。からだじゅうの血がかっと頭へのぼるようで、足がぶるぶるとひどくふるえた。跫音はまっすぐに近づいて来た。そして、すこし葭簾のはねてある入口からしずかにはいって来たのは、やっぱり待っていた弥次郎であった。おかよは全身が燃えるように感じ、舌が硬ばって、すぐにはものも云えなかった。弥次郎も黙っていた。……そとは星空で、まだ宵明りものこっていたが、葭簾で囲った小…