青空文庫

「壺」の感想

つぼ

初出:「講談雑誌」博文館、1940(昭和15)年10月号

書き出し

一寛永十二年十一月の或る日、紀伊のくに新宮の町の万字屋という宿に、木村外記となのる中年の武士が来て草鞋をぬいだ。背丈のすぐれて高い、骨ぐみのがっちりとした、いかにも精悍なからだつきだし、浅黒い膚の面ながな顔にぐいと一文字をひいたような眉や、ひき結ぶと少しうけくちになる口もとや、そしてときどきひじょうに鋭い光りを放つ双眸など、すべてが逞しい力感に満ちているが、そういう風貌とは反対に着ている物も粗末だ

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