青空文庫

「平凡人の手紙」の感想

平凡人の手紙

へいぼんじんのてがみ

初出:「新潮 第二十七卷第一號」1917(大正6)年7月1日

有島武郎31

書き出し

もう一年になつた。早いもんだ。然し待つてくれ給へ。僕はこゝまで何の氣なしに書いて來たが、早いもんだとばかりは簡單に云ひ切る事も出來ないやうな氣がする。僕が僕なりにして來た苦心はこの間の時間を長く思はせもする。まあ然し早いもんだと云つておかう。早いもんだ。妻が死んだ時電報を打つたら君はすぐ駈けつけてくれたが、その時僕がどんな顏で君を迎へたかは一寸想像がつかない。僕は多分存外平氣な顏をしてゐた事と思ふ

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