青空文庫

「熊の足跡」の感想

熊の足跡

くまのあしあと

徳冨蘆花35

書き出し

勿來連日の風雨でとまつた東北線が開通したと聞いて、明治四十三年九月七日の朝、上野から海岸線の汽車に乘つた。三時過ぎ關本驛で下り、車で平潟へ。平潟は名だたる漁場である。灣の南方を、町から當面の出島をかけて、蝦蛄の這ふ樣にずらり足杭を見せた棧橋が見ものだ。雨あがりの漁場、唯もう腥い、腥い。靜海亭に荷物を下ろすと、宿の下駄傘を借り、車で勿來關址見物に出かける。町はづれの隧道を、常陸から入つて磐城に出た。

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