青空文庫

「突堤」の感想

突堤

とってい

初出:「中央公論」1935(昭和10)年10月「中央公論」五十周年記念特大号

下町風土回顧的郷愁叙情的懐古静謐

書き出し

炎天の下で青桐の葉が黝んで見えるほど暑気のきびしい或る夏の単調な午後、格子の内と外の板廊下にいる者とが見えないところでこんな話をしている。「どうしたんだか、まだ写真を送ってよこさないんだがね」「江の島で撮ったんですか」「ああ、子供ら五人ズラッとハア並べちゃってね。わしと女房と撮ったが——どうしたもんだか……」「いくらでした?」「三枚で一円さ」「——普通は二週間は待ってやらなくちゃね。所書分っている

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