青空文庫

「シベリヤに近く」の感想

シベリヤに近く

シベリヤにちかく

里村欣三15

書き出し

一「うむ、それから」と興に乗じた隊長は斜な陽を、刃疵のある片頬に浴びながら、あぶみを踏んで一膝のり出した。すると鞍を揉まれたので、勘違いして跳ね出そうとした乗馬に「ど、どとッ、畜生」と、手綱をしめておいて、隊長は含み笑いに淫猥な歯をむいて「それから」と、飽くまで追及して来た。軍属の高村は、ひとあし踏み出して乱れた隊長の乗馬に、自分の馬首を追い縋って並べ立てながら「は」と、答えておいて、あ、は、は、

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