青空文庫

「貸家探し」の感想

貸家探し

かしやさがし

初出:「都新聞」1935(昭和10)年11月27日~30日

芙美子14

書き出し

山崎朝雲と云うひとの家の横から動坂の方へぽつぽつ降りると、福沢一郎氏のアトリエの屋根が見える。火事でもあったのか、とある小さな路地の中に、一軒ほど丸焼けのまま柱だけつっ立っている家のそばに、サルビヤが真盛りの貸家が眼についた。玄関が二つあるけれども、がたがたに古い家で、雨戸が水を吸ったように湿っていた。ビール瓶で花園をかこってあるが、花園の中には塵芥が山のように積んであり、看護婦会の白い看板が捨て

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