潜航艇「鷹の城」
せんこうてい「ハビヒツブルグ」
初出:「新青年」博文館、1935(昭和10)年4~5月号分量:約177分
書き出し:第一編海底の惨劇一、海—武人の墓それは、夜暁《よあけ》までに幾ばくもない頃であった。すでに雨は止み、波頭も低まって、その轟きがいくぶん衰《おとろ》えたように思われたが、闇はその頃になるとひとしおの濃さを加えた。その深さは、ものの形体《かたち》運動《うごき》のいっさいを呑《の》み尽してしまって、その頃には、海から押し上がってくる、平原のような霧があるのだけれど、その流れにも、さだかな色とてなく、なに...