いっしゅういちやものがたり
初出:「新青年」博文館、1938(昭和13)年8月
書き出し
一、大人 O'Grie僕は、「実話」というのが大の嫌いだから、ここには本当のことを書く。というものの、どうもこれが難題なので、弱る。作らず、嘘でなく、じっさい僕が聴いた他人の告白なんて——よくよく天邪鬼でないかぎり、いえた芸ではないと思う。とにかく、これはいわゆる実話ではない。あくまで、僕が経験し、じっさいに聴いた話である。で、冒頭に、僕の経歴の一部を明らかにする。これまで、経歴不明の神秘性がある…