青空文庫

「東京文壇に与う」の感想

東京文壇に与う

とうきょうぶんだんにあたう

初出:「現代文学」1942(昭和17)年10月

書き出し

豪放かつ不逞な棋風と、不死身にしてかつあくまで不敵な面だましいを日頃もっていた神田八段であったが、こんどの名人位挑戦試合では、折柄大患後の衰弱はげしく、紙のように蒼白な顔色で、薬瓶を携えて盤にのぞむといった状態では、すでに勝負も決したといってもよく、果して無惨な敗北を喫した。試合中、盤の上で薄弱な咳をしていたということである。この神田八段は大阪のピカ一棋師であるが、かつてしみじみ述懐して、——もし

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