あわしまかんげつし
初出:「早稻田文学」1926(大正15年)4月号
書き出し
寒月氏は今年七十歳を以て二月廿三日に永逝した。本間久雄氏から、予の知るところの寒月氏を傳へて呉れと依頼を受けたので、ほんとにたゞ予の知れる限りの寒月氏——予の知らぬ他の方面の寒月氏も定めし多いだらうが、それに就ての臆測や聞取りなぞを除いて——を有りのまゝに思出づるまゝに記す。人の事をしるすに、當推量や嘘を交ぜて、よい加減に捏上げるのは、予の好かぬことである。だから以下にしるすことは、予自身の目賭し…