靄の彼方
もやのかなた
――現代風俗描写への待望――
――げんだいふうぞくびょうしゃへのたいぼう――
初出:「大毎美術 第十一巻第八号」1932(昭和7)年8月
上村松園約5分
書き出し
心忙しい気もちから脱れて、ゆっくり制作もし、また研究もしたいと年中そればかりを考えていながら、やはり心忙しく過ごしています。そんならそれで、その心忙しい程度に何か出来るかと申しますと、一向何もかもハカどらないのには、自分ながら愛想がつきます。世間の作家たちのことは、あまり知らない私のことですから、どんなものかわかりませんが、私としては、年から年中、あれも描かんならん、これもこうと考えに追い廻されて…
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