青空文庫

「早耳三次捕物聞書」の感想

早耳三次捕物聞書

はやみみさんじとりものききがき

03 浮世芝居女看板

03 うきよしばいおんなかんばん

初出:「講談雑誌」1928(昭和3)年1月

不忘26

書き出し

第一話四谷の菱屋横町に、安政のころ豆店という棟割長屋の一廓があった。近所は寺が多くて、樹に囲まれた町内にはいったいに御小役人が住んでいた。それでも大通りへ出る横町のあたりは小さな店が並んで、夕飯前には風呂敷を抱えた武家の妻女たちが、八百屋や魚屋やそうした店の前に群れていた。豆店というのは、菱屋横町の裏手の空地にまばらに建てられた三棟の長屋の総称で、夏になると、雑草のなかで近所の折助が相撲をとったり

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