青空文庫

「途上」の感想

途上

とじょう

初出:「中央公論」1932(昭和7)年2月

嘉村礒多72

書き出し

六里の山道を歩きながら、いくら歩いても渚の尽きない細長い池が、赤い肌の老松の林つゞきの中から見え隠れする途上、梢の高い歌ひ声を聞いたりして、日暮れ時分に父と私とはY町に着いた。其晩は場末の安宿に泊り翌日父は私をY中学の入学式につれて行き、そして我子を寄宿舎に托して置くと、直ぐ村へ帰つて行つた。別れ際に父は、舎費を三ヶ月分納めたので、先刻渡した小遣銭を半分ほどこつちに寄越せ、宿屋の払ひが不足するから

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