青空文庫

「あの顔」の感想

あの顔

あのかお

初出:「ロック 三巻六号」1948(昭和23)年10月

大倉燁子約928

書き出し

1刑事弁護士の尾形博士は法廷から戻ると、久しぶりにゆっくりとした気分になって晩酌の膳にむかった。庭の新緑はいつか青葉になって、月は中空にかかっていた。うっすらと化粧をした夫人が静かに入って来て、葡萄酒の瓶をとりあげ、「ずいぶん、お疲れになったでしょう?」と上眼使いに夫を見上げながら、ワイン・グラスになみなみと酒を注いだ。「うむ。だが、——長い間の責任をすましたので、肩の荷を下したように楽々した」「

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