青空文庫

「恐しき通夜」の感想

恐しき通夜

おそろしきつや

初出:「新青年」1931(昭和6)年12月号

海野十三44
下層階級の描写怪奇科学的手法静謐鬱屈

書き出し

1「一体どうしたというんだろう。大変に遅いじゃないか」眉を顰めて、吐きだすように云ったのは、赭ら顔の、でっぷり肥った川波船二大尉だった。窓の外は真暗で、陰鬱な冷気がヒシヒシと、薄い窓硝子をとおして、忍びこんでくるのが感じられた。「ほう、もう八時に二分しか無いね。先生、また女の患者にでも掴ってんのじゃないか」腕時計の硝子蓋を、白い実験着の袖で、ちょいと丸く拭いをかけて、そう皮肉ったのは白皙長身の理学

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