青空文庫

「老中の眼鏡」の感想

老中の眼鏡

ろうじゅうのめがね

初出:「改題」1930(昭和5)年

時代劇歴史的人物の描写死の受容厳粛緊張静謐

書き出し

一ゆらりとひと揺れ大きく灯ざしが揺れたかと見るまに、突然パッと灯りが消えた。奇怪な消え方である。「……?」対馬守は、咄嗟にキッとなって居住いを直すと、書院のうちの隅から隅へ眼を放ち乍ら、静かに闇の中の気配を窺った。——オランダ公使から贈られた短銃も、愛用の助広もすぐと手の届く座右にあったが、取ろうとしなかった。刺客だったら、とうに覚悟がついているのである。だが音はない。呼吸のはずみも殺気の取きも、

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