青空文庫

「栄螺」の感想

栄螺

さざえ

初出:「新風土」1940(昭和15)年8月

下町風土季節の移ろい郷愁叙情的静謐

書き出し

栄螺田畑修一郎私はもう何年か夏の海に遠ざかっている。海で泳ぐ快味は忘れはしないが段々縁がなくなるようだ。私は日本海沿岸に近い所に生れたので、幼い時から夏になると殆ど毎日のように海へ入った。私の生れた地方は中国地方の花崗岩の地質のためか、海岸はいわゆる白砂で、水もきれいだ。東京で羽田の潮干狩に行って汚いのにこりた。そのためもあるが、東京に住みついてから十一年ばかりまだ附近の海水浴場へ出かけたことがな

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