青空文庫

「漱石山房の冬」の感想

漱石山房の冬

そうせきさんぼうのふゆ

初出:「サンデー毎日」1923(大正12)年1月

作家の日常喪失と記憶回顧的文壇交友孤絶懐古静謐

書き出し

わたしは年少のW君と、旧友のMに案内されながら、久しぶりに先生の書斎へはひつた。書斎は此処へ建て直つた後、すつかり日当りが悪くなつた。それから支那の五羽鶴の毯も何時の間にか大分色がさめた。最後にもとの茶の間との境、更紗の唐紙のあつた所も、今は先生の写真のある仏壇に形を変へてゐた。しかしその外は不相変である。洋書のつまつた書棚もある。「無絃琴」の額もある。先生が毎日原稿を書いた、小さい紫檀の机もある

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