青空文庫

「病室の花」の感想

病室の花

びょうしつのはな

初出:「アララギ」1920(大正9)年5月

寺田寅彦17
下宿生活内省病中苦悩自然と人間の冥通分析的回顧的静謐

書き出し

発病する四五日前、三越へ行ったついでに、ベコニアの小さい鉢を一つ買って来た。書斎の机の上へ書架と並べて置いて、毎夜電燈の光でながめながら、暇があったらこれも一つ写生しておきたいと思っていたが、つい果たさずに入院するようになった。入院の日に妻がいろいろの道具といっしょにこの鉢を持って来た、そして寝台のすぐ横にある大理石を張った薬びん台の上に載せた。灰色の壁と純白な窓掛けとで囲まれたきりで、色彩といえ

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