青空文庫

「浚渫船」の感想

浚渫船

しゅんせつせん

初出:「文芸戦線」1926(大正15)年9月号

葉山嘉樹13
下層階級の描写病中苦悩貧困孤絶鬱屈

書き出し

私は行李を一つ担いでいた。その行李の中には、死んだ人間の臓腑のように、「もう役に立たない」ものが、詰っていた。ゴム長靴の脛だけの部分、アラビアンナイトの粟粒のような活字で埋まった、表紙と本文の半分以上取れた英訳本。坊主の除れたフランスのセーラーの被る毛糸帽子。印度の何とか称する貴族で、デッキパッセンジャーとして、アメリカに哲学を研究に行くと云う、青年に貰った、ゴンドラの形と金色を持った、私の足に合

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