青空文庫

「蚊遣り」の感想

蚊遣り

かやり

初出:「読売新聞」1920(大正9)年8月2日号

下町風土季節の移ろい懐古叙情的静謐

書き出し

丘をはさんで点綴するくさぶき屋の低い軒端から、森かげや小川の岸に小さく長閑に立っている百姓小舎のくすぶった破風から晴れた星空に立ちのぼってゆく蚊やりの煙はいかにも遠い昔の大和民族の生活を偲ばせるようで床しいものです。此の夏は福島のふるさとに帰って祖母達と久しぶりで此の俳味に富んだ何とも云われぬ古風な懐しい情景に親しむことができました。夕方お星様がチラチラまたたく頃になると何の家でも生のままの杉の葉

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