青空文庫

「東京小品」の感想

東京小品

とうきょうしょうひん

作家の日常内省自己認識虚構と真実回顧的軽妙静謐

書き出し

鏡自分は無暗に書物ばかり積んである書斎の中に蹲つて、寂しい春の松の内を甚だらしなく消光してゐた。本をひろげて見たり、好い加減な文章を書いて見たり、それにも飽きると出たらめな俳句を作つて見たり——要するにまあ太平の逸民らしく、のんべんだらりと日を暮してゐたのである。すると或日久しぶりに、よその奥さんが子供をつれて、年始旁々遊びに来た。この奥さんは昔から若くつてゐたいと云ふ事を、口癖のやうにしてゐる人

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