青空文庫

「ゴールデン・バット事件」の感想

ゴールデン・バット事件

ゴールデン・バットじけん

初出:「新青年」1933(昭和8)年10月号

海野十三64
下町風土作家の日常探偵小説回顧的緊張静謐

書き出し

1あの夜更、どうしてあの寂しい裏街を歩いていたのかと訊かれると、私はすこし顔が赭くなるのだ。兎に角、あれは省線の駅の近所まで出て、円タクを拾うつもりで歩いていたのだった。連れが一人あった。帆村荘六なる男である。——例の素人探偵の帆村氏だった。「君の好きらしい少女は、いつの間にやら居なくなったじゃないか」と帆村が云った。「うむ——」私は丁度そのとき、道を歩きながら、その少女のことを胸に描いていたとこ

1 / 0