ふるまち
初出:「沖縄毎日新聞」1911(明治44)年1月10日
書き出し
黄昏時を四五分すぎたあと、薄闇を縫ふて、紅い々々燈の華が、冬咲きの仏相花のやうにちらつく。昔の栄華を夢見る古るい街、傾むいた軒を並べて、底深く静まりかへる。蔦の生へた石垣からは、亡びの色調を帯びた虫の歌。また、たく/″\と流れる溝のなげかひ。私は古るい街の巷に迷ひこんだ、何処かへ逃げ道を見出さうとした、古るい街は逃すまいと抱きつく。私と亡びゆく古るい街、その間に永い哀情が横たへ、深かい/\闇に沈ん…
尾生の信
富嶽百景
蒼穹