青空文庫

「ある遊郭での出来事」の感想

ある遊郭での出来事

あるゆうかくでのできごと

公娼存廃論者への参考資料としての実例

こうしょうそんぱいろんじゃへのさんこうしりょうとしてのじつれい

初出:「婦人公論 第十年八号」中央公論社、1925(大正14)年8月1日

若杉鳥子15
下層階級の描写犯罪の動機金銭と人間関係厳粛孤絶鬱屈

書き出し

1大泥棒の客ある晩、F楼の亭主が隣家のH楼の電話を借りにいった。Fにも電話があるのに自分の処へ借りに来たものだから、H楼の亭主は何事かと思って、『お宅の電話は、どうかしましたか?』と訊いた。『ナニ、警察へちょっと……野郎感づくと遁がしちまうから……』F楼の亭主はそういいながら電話室へ入ると、じきに電話を切って出て来たが、馴れ切った中にも、流石に異常な緊張を見せてそそくさと出ていった。それからすぐに

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