青空文庫

「武装せる市街」の感想

武装せる市街

ぶそうせるしがい

黒島伝治296
下層階級の描写文明開化歴史的背景叙情的鬱屈

書き出し

一五六台の一輪車が追手に帆をあげた。そして、貧民窟を横ぎった。塵埃の色をした苦力が一台に一人ずつそれを押していた。たった一本しかない一輪車の車軸は、巨大な麻袋の重みを一身に引き受けて苦るしげに咽びうめいた。貧民窟の向う側は、青い瓦の支那兵営だ。一輪車は菱形の帆をふくらましたまゝ貧民窟から、その兵営の土煉瓦のかげへかくれて行った。帆かげは見えなくなった。だが、車軸はいつまでも遠くで呻吟を、つゞけてい

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