そとにでたとも
書き出し
「二三年、娑婆の風にあたつて来るよ。」退院するY——を見送つて行くと、門口のところで彼はさう言つて私の手を握つた。「うん、体、大切にしろ、な。」と言つて、私はYの手を握りかへしてやつた。それ以上は何も言ふことがなかつた。手を放すとYは柊の垣に沿つて駅の方へ歩いて行つた。Yの姿が見えなくなると、私はその足で眼科へ出かけた。Yとは、私はもう二年近い交遊をもつてゐる。彼は三年をこの病院で暮したが、病気の…
ある心の風景
新生
渓をおもふ